例会・イベント

開催の報告

大阪支部新春講演会のご報告

講師 中央大学名誉教授
中條誠一氏

2023年1月21日新年例会に先立ち、恒例の新春講演会を開催しました。今回は講師に中條誠一中央大学名誉教授(日商岩井OB、社友会幹事)をお迎えし「新しいお金・デジタル通貨(デジタル円)について」~デジタル通貨とはどんなお金、誰が発行するの、生活はどう変わるの?~ というテーマで、ご講演いただきましたので、その概要をご報告します。

デジタル通貨をご理解いただくために「3つのお話」をさせていただきます。

(1) 何がお金で、「デジタル通貨」とはどんなものか?
「現在、発行されているお金は次の2つです。」

  • 現金通貨:お札とコイン
  • 預金通貨:普通預金、当座預金など

この2つに加えて第3の新しいお金として出てきたのが、夢のお金と言われるデジタル通貨です。

「新しいお金・デジタル通貨とは?」
貨幣的な価値を持つデータ(取引や残高データ)をデジタル化して個々人のパソコンやスマホなどに搭載し、ネット上で直接やり取りできるようにしたものです。
「デビットカード、スイカやペイペイはお金ではありません。」
多くの人がこれらをお金と勘違いし、同一視しがちですが、決定的な違いがあります。これらはお金ではなく「お金のようなもの」で、背後に預金がないと機能しません。また、加盟店でしか使えませんし、使用料を払わなければなりません。しかし、デジタル通貨はお金そのものですから使用料などなくどこでも使えます。

残念ながら、お金は改ざんの危険性があるため、ネットでは送金できませんでした。ですから私たちは預金というデータの形で銀行のサーバーに預け、口座振替をしてもらってきました。しかし、ブロックチェーンという新技術の登場で、自分のお金は自分のパソコンやスマホで保有し、ネット上でやり取りが出来るようになったため、銀行を頼る必要がなくなりました。これがデジタル通貨なのです。

(2) 誰が「デジタル通貨」を発行すべきか?
現在、デジタル通貨の発行は民間が先行しています。ビットコインなどの仮想通貨(暗号資産)やリブラ(ディエム)、さらに日本ではデジタルJPYと称するものが実用化を目指して実証実験中とのことです。

私は民間がデジタル通貨を発行することに反対です。やはり政府・日銀がきちんと発行・管理すべきと考えます。お金は、安全・安心で安定的でなければなりません。民間が発行するとなると、密輸や麻薬取引に使用されたり、発行者が信用を失い暴落しかねません。さらにお金を発行すると独占的な利益(通貨発行益)が得られるのですが、そんな特権を一部の民間主体にだけ与えてよいのでしょうか?

 

現在、世界ではバハマのサンドラ―、カンボジアのバコン、中国のデジタル人民元などが発行或いは使用のための実験中であります。日本でも、近年政府・日銀は積極的な姿勢に転じていますが、まだまだ検討しなければならない問題点が多くあります。当面は、デジタル通貨の発行は必要とされておりませんが、将来的には必ずデジタル通貨を発行する時期が到来することを見据えて準備しておく必要があります。

(3)「デジタル通貨」の発行により私たちの財布とその中身はどう変わるか?
デジタル通貨が発行されたら、現金、預金、各種の「お金のようなもの」にそれが加わり、私たちの生活は選択肢が広がります。特に、便利なデジタル通貨の登場で、キャッシュレス化が進むことは間違いありません。預金からの乗り換えもあると思いますが、稼いだお金をデジタル通貨としてすべて自分のスマホなどで管理・使用する人はいないでしょう。やはり、今使わないものは安心・安全な預金とし、デジタル通貨は日々の支払いが中心になるのではないでしょうか?

また、スイカやペイペイなどのような「お金のようなもの」への打撃は大きく、生き残りをかけた改革や工夫が求められるでしょう。例えば、割勘や個々人のやり取りができるような機能の向上、使用可能店舗の拡大のための統合、さらにはユーザーへのポイント付与、キャッシュバック等々のサービスを拡充していくと思います。

(報告:杉山 弘)

本講演会並びに引続いて開催された新年例会については、次のアルバムから会場風景がご覧になれます。
https://30d.jp/sunrock2000/23/photo/38
合言葉は、社友会大阪 です。