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私たちの物語

ヴォー・ホン・フック著
翻訳者 加納悠香
編集 双日株式会社
企画協力 双日ベトナム会社

著者のヴォー・オン・フック氏(以下フック氏)は、1945年10月、ベトナム社会主義共和国(以下ベトナム)」ハティン省生まれの理知的で詩心に富む政治家である。1968年12月、ハノイ百科大学・鉱山開拓クラスを卒業し、国家計画委員会(後に計画投資省に改称)に就職、エリート官僚として要職を歴任し、1996年6月には党中央執行委員に選出された。2002年~11年8月までの2期の10年間、計画投資大臣を務め、ベトナム経済発展の礎を築き、合わせ日越関係の発展に尽力され2012年に旭日重光章を受章されている。

本書は、幼少期から現在までに出会った多くの友人、知人との忘れ難い思い出を綴った自伝、回想録である。2021年に筆を執り、翌22年12月にベトナムで出版、本年5月に双日・平井副社長、双日ベトナム会社・木ノ下社長、翻訳者・加納氏の協力を得て日本語版の発刊に至っている。

双日・藤本社長は、「本年、日越外交樹立50周年を迎えた。私が経団連ベトナム経済委員会の委員長を務めるご縁もあり、日本語版の出版は日本、双日の為にも価値ある出版である」と述べている。本書は、寄稿文、写真集、「まえがき」、「あとがき」を加え7章で構成され全408ページある大作である。

この要約は、紙面の制約により作成したもので、日商岩井、双日が関連する主要箇所に絞りご紹介する。第五章の九節では特別に「双日ベトナム会社」が設けられ(306~314ページ等)、日商岩井とベトナムとの最初の出会いからの歴史が詳しく述べられている。310ページ以降には、1987年3月に第一回の日商岩井・ベトナム合同委員会が開催され、6年後に経団連下の日本ベトナム協力委員会(日本ベトナム経済委員会)設立へと繋がる。日商岩井の建設的な活動がベトナムの経済の発展に貢献したと評価され日商岩井の西尾社長、荒木氏、織田氏、榊原氏、松田氏の思い出が語られている。2006年12月の双日ハノイ駐在員事務所開設20周年記念パーティで、フック氏はベトナム政府を代表して、友好勲章(製造業以外では唯一の外資系企業表彰)を双日・土橋会長に授与された。

フック氏は、「ベトナムと日商岩井との最初の出会いは1973年1月26日からでそれから起算すると33年以上になる」と紹介、「初めて知り合った日本の会社、友人達が日商岩井、その社員達であり、それが為に私は双日・日商岩井との永遠に忘れられない昔の思い出がある」とされ、榊原氏、松田氏、首藤氏の名前を挙げられる。

「ベトナムが苦境にあった1986年~1990年という時期から苦楽を共にし、付き合いのある日商岩井の友人達のことを藤本社長と話した」とのエピソードも紹介されている。最後に皆さまに『私たちの物語』のご一読を改めてお願いすると共に、「日越関係がますます発展し、末永く続きますように!」のフック氏の一文を引用し擱筆としたい。

『一樹のかげ』編集長 橋本 政彦(66118)