例会・イベント

日商岩井社友会講演会

第17回講演会報告

演出家から見た鈴木商店
LiveUpCapsules主宰 作・演出家
村田裕子氏

令和元年秋の講演会は劇団LiveUpCapsules主宰の村田裕子氏をお迎えして9月25日14時より飯野ビル21階会議室にて行いました。演劇を続ける人は一種の中毒症状に陥っているようです。興業としては収支的に厳しくギャラは出ない、殆どの俳優はバイトをしながら活動を続けています。作品を作り上げたり演じたりする喜びはあるでしょうが、それ以上に舞台で観客と一つになり感動と明日への元気を与える。これが演劇に携わる人たちには無上の喜びのようで、ひとたびこれを知ってしまうと抜けられないのでしょう。それにしてもなぜ鈴木商店を扱ったのか、そのきっかけなど大いに興味あるところです。

講演会ではまず、「彼の男十字路に身を置かんとす」の要約版を見ました。若い金子直吉が、相場の読みが当たり大喜びするシーンや、高畑など部下たちに対し、「買いや!買いや!」と大声で指示を出すシーンなど、我々年配者にはやや聞き取りにくいところもありますが、ライブで見るとかなり迫力があるでしょう。それでは講演の内容の一部をご紹介します。

1.鈴木商店?何その会社?
LiveUpCapsules主宰の村田です。本日は皆さんと舞台が出来上がる過程を体感するとともに、この舞台を作るきっかけなど説明しながら、小劇団の楽しさ、大変さなどをご理解頂ければと思います。皆さまの偉大な先輩の方々を、金子、西川、高畑などと呼び捨てにしますが、これは劇を作る上で人物を等身大で把握し議論してきたためで何卒ご容赦願います。また私は劇団仲間からはムラタンと呼ばれています。皆さんもこの講演が楽しかったと思ったらムラタンと呼んで下さい。

私は中学時代に演劇に魅せられ大学卒業後すぐに劇団を設立、15年間はのんびりと芝居をやっており内容はファンタジーが中心でした。30歳を境に実在の人物をモデルに舞台を作ろうと思い、与謝野晶子さんの「君死にたまうことなかれ」などを取り上げました。
今から4年前、歴史に詳しい舞台監督さんから、明治、大正にかけて三井、三菱を凌ぐ鈴木商店という会社があったのを知っているかと言われ、何それ?そんな会社知らないと軽く受け止めていました。しばらくしてたまたま読んだ本が城山三郎氏の『鼠』でした。今にして思うと運命の一冊です。いつか舞台監督さんが言ってたまさにあの鈴木商店です。当時の時代背景が頭の中で鮮明になり、真偽も分からずデマや風評で焼き討ちにまで発展してしまった事件は、現代にも通じるなと恐怖に感じました。ちょうどその時、日本資本主義の父渋沢栄一を書きませんかとの話がありました。それは「見晴らす丘の紳士」という、渋沢栄一と金子直吉の丁々発止の掛け合いの作品になりました。あの渋沢栄一をしてすごいと言わしめた金子直吉を是非書きたいという思いが強くなりました。大正時代に日本のGDPの一割の年商を誇る鈴木商店には、金子のほかに金子を支える西川、若くして才能を見だされた高畑といった個性的な仲間がいました。彼らが金子を助け、盛り上げ鈴木商店を大きくし、当時の日本を引っ張っていくさまは舞台にうってつけでした。鈴木商店への関心はますます高まり、さらに調査を進めていくと、やたら詳しいサイトにぶつかりました。鈴木商店記念館です。ここには人の手が加わっていない生の資料がたくさんあり、台本を作る上でも大変役にたちました。私は鈴木商店にのめり込み「金子の気持ちが分かる」というほどにまで至りました。そしてカリスマ金子を支える西川の存在、金子の命を受け動く有能な高畑、この3人を核に舞台を作ろうと立ち上がりました。

2.「彼の男・・・」完成
金子直吉役は山田隼平しかない。彼の猪突猛進型のキャラはまさに金子でしたが、当時25歳の最若手だったのでちょっと悩んだようですが快諾してくれました。そのほかのキャストもギャラは出ないけど私と楽しいことやろうよと一人ひとり説得に回りました。何とか13人揃えたものの本が仕上がらず、どうしても「これだ!」という部分が出来ない。そこで思い立って神戸に行き、神戸市立博物館を訪ねたがリニューアル中で休館。博物館前のロダンの彫像のポーズでした。でも、神戸の街をブラブラしたのが良かったようでようやく本は完成。関係者への了解取り付けのため企画書を送付。返事がないケースが殆どですが、翌日すぐに鈴木商店記念館様より、追って双日株式会社様からも問い合わせがあり、忘れもしない2018年6月14日に双日本社を訪問し企画説明を行いました。我々を悪い人ではなさそうだと思ったようで、その後は双日広報の小林氏から商社についていろいろ教えてもらいました。小林さんもものすごい熱量の持ち主で、我々はその熱量をもらい一気に公演に突入して行きました。

3.再演が決定
公演も無事終了し、鈴木家、金子、西川、高畑のお墓詣りに行きました。三宮駅から徒歩で行けるかと思いきや暑い日で大変でした。お墓は山の上で振り返ると神戸の港が一望できるところです。きっと金子はここから世界を見ているのでしょう。鈴木商店を描くには下北沢では狭すぎました。ということで来年はもう少し広い新宿シアターモリエールで4月8日~15日。そして神戸でも上演します。神戸三宮シアター・エートーで4月18日~19日予定です。是非見に来て下さい。本日はご清聴頂きまことに有難うございました。

(報告:山田朝一郎)