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新刊紹介

世界遺産ガイド -未来への継承編-

古田 陽久 (74126)

新型コロナウイルス禍の影響での外出自粛措置で、思いついたのが、本書の刊行です。2022年の「世界遺産条約採択50周年」に向けて、「未来への継承」をテーマとしました。

私が、ユネスコの事業である「世界遺産」のことを知ったのは、日本が世界遺産条約を締約した1992年頃でした。その始まりは、1989年に約15年半勤務した日商岩井を退社し、郷土の広島に帰り、「シンクタンクせとうち総合研究機構」を設立し、研究テーマを模索しているなか、地元の「原爆ドーム」や「厳島神社」がユネスコの「世界遺産」登録をめざしていることを新聞やテレビを通じて知ったことでした。

ユネスコの「世界遺産」とは何なのか、また、どの様なものが「世界遺産リスト」に登録されているのか、こうした疑問にこたえるために『世界遺産データ・ブック -1995年版-』を語学に堪能な日商岩井時代の先輩の知恵もお借りして、1995年11月に発刊いたしました。これが朝日新聞で紹介され、初版千部はあっという間に売り切れてしまいました。

その後「世界遺産」についての講演依頼が増えてきて、私の仕事のなかで、いつの間にか、「世界遺産」の研究が主流を占めるようになり、本の読者の方々を中心にその輪が全国に広がりました。

また、わがまちの誇れる自然環境や文化財をユネスコの「世界遺産リスト」に登録したいと願う民間団体や自治体が2000年代になって急増し、山梨県と静岡県にまたがる「富士山 -信仰の対象と芸術の源泉-」(2013年世界遺産登録 文化遺産)をはじめ全国的な「世界遺産登録運動」に協力してきました。インターネットの普及と共にホームページ「世界遺産と総合学習の杜」を開設。2003年の第27回パリ会議を皮切りに、世界遺産委員会に参加できる機会を得て、毎年世界の各地で開催されるその委員会にも参加してきました。

そうこうするうちに、ユネスコの松浦晃一郎・元事務局長や愛川紀子・元文化局無形文化遺産担当部長と知り合い、「世界無形文化遺産」、「世界の記憶」にも研究領域を広げることができました。たぶん、「世界遺産」を加えた三つの「ユネスコ遺産」を研究しているのは、民間では、世界的にも数少ないのではと思います。毎年、新しい遺産が登録されるので、その遺産がどういうものなのか、世界的な自然遺産、有形・無形の文化遺産、記録遺産、初めて聞くもの、見るものが数多くあり、調べるのも大変でした。

こうした地道な調査研究の成果が、『世界遺産データ・ブック』、『世界無形文化遺産データ・ブック』、『世界の記憶データ・ブック』で、より詳しいものについては事典とし、或は、地域別、テーマ別に『世界遺産ガイド』としてシリーズで刊行してきました。

いつまで、新たな物件が選定されるのかわかりませんが、これまでに蓄積してきた情報や知識を無為にすることなく、後世へ継承していく必要性を考えるようになりました。そうしたなかで、本書は2022年の「世界遺産条約採択50周年」に向けて、これまで行ってきた「ユネスコ遺産」(「世界遺産」「世界無形文化遺産」「世界の記憶」)の研究を通じて考えてきたこと、行ってきたことを記録に残し、私の思いを将来世代に引き継いでいくことを目的に出版するものです。

「大局本道」「継続は力なり」「ローマは一日にして成らず」。これまで、国内外の多くの方々にお世話になりました。2021年4月、私は古希を迎えます。本書は個人的なことも含まれますが、参考になることがあれば大変嬉しく思います。


本書に関する詳細は下のURLからご覧いただけますので、目を通していただければ幸いです。 http://www.wheritage.net/ISBN978-4-86200-242-6.html